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と、言うことができたら、タイヘンな目に遭った人っぽくていいんだけど、本当のところ、とにかくグーグー寝てしまったのだ。


お腹が減ろうが、寒かろうが、基本的に「『眠れなくなる』ことができない」人なので、

ありゃりゃ、また止まったぞ

寝る

おや、まだ止まってるぞ

寝る

まだまだ止まってますねえ

寝る

まだ動いてないか

寝る

夜が明けたぞ

寝る

てな具合に時間は過ぎて、午前11時にようやく米原駅に到着。


どうしても自分をタイヘンな目に遭った人に仕立て上げたいわけじゃないけど、それは「安眠」じゃなかった。なにしろほぼ1時間おきに目が覚める、というか、起こされる。すぐ前の座席の女の子の携帯に電話が入るのだ。

その着メロが「キューピー3分クッキング」。座った座席が窓際で、女の子は携帯を窓枠の縁にのっけていたから、その携帯はほとんど目の前に置かれた状態。これが1時間のインターバルを置いて、几帳面かつ大音量で「タラ・タッ・タ・タ・タ」とやりはじめるのだ。

もちろん、「キューピー3分クッキング」全曲(ってほどでもないか)を最後までやって、ちゃんとフェードアウトしてくれれば、ロッシーニを聴きながらパスタを茹でる夢を見ながら引き続き眠っていることもできたんだろうけど、まさに「キューピー3分クッキング」的グループ感(ってほどでもないか)が高まろうとする瞬間に着メロが終わってしまう。茹であげ30秒前に電話がかかってきたような状態だ。

ロッシーニを聴きながらパスタを茹でてる最中に電話がかかってくると、女性の声で「10分だけいいかしら?」と尋ねられて、その後で空き地に行って井戸の底に降り立つと、「皮剥ぎボリス」がアカプルコで女の子をナンパしてる場面に遭遇、という夢を見ながら引き続き眠る、ということもテクニカルには可能である。

でも、その日は大阪で慣れない仕事をやった後だったから、そこまで夢を加工するパワーが残っていない。だから不本意ながら毎回起きちゃうのである。


そういうわけで、米原駅に止まったままの新幹線を降り、駅前ショッピングセンター内のマクドナルドでチーズバーガーX2を食べ(マックのチーズバーガーがこんなに美味いとは)、もいちど駅に戻って、しょうがないから新大阪まで引き返すまでの間、脳ミソが発泡スチロールになったのではないかと思うくらい頭がボーっとしてた。

新大阪に戻ると、プラットホームには新聞のカメラマンが脚立の上でシャッターチャンスを狙っている。階段を降りるとテレビのインタビュアーが待ちかまえ、降りてくる人をつかまえては、「車内の様子はいかがでしたか?」なんてことを質問してる。

「乗客」の見せる「一様に疲れた表情」の原因の(少なくとも)一つは、「キューピー3分クッキング」にあるわけだけど..


October 12, 2000

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