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「情けは人のためならず」ということわざには二通りの解釈がある。

1)情けをかけるのは、人のためではなく自分のためである。
2)情けをかけると、人のためにならない。

本来は1)の意味で使われていたんだけど、最近では2)の意味で解釈する人が増えているらしい。古い人間である私は、この言葉を1)の意味合いで解釈している。


だから、昨日の夕方、スターバックスで珈琲を買って店を出ると、スタンプカードを落っことした人がいたから、すぐに「これ、落ちましたよ」と差しだそうとした。

ちょっと訂正。「スタンプカードを落っことした人」をはっきりと確認したわけじゃない。スタンプカードが地面に落ちるのを見た。で、落下の角度ならびにその時の人通りからみて、それを落としたのは

1)恵比寿駅に向かう男性二人組み
2)駅とは反対方向に向かう一人の女性

のどちらかに違いない、と思った。

「スタンプカードを落っことした人」候補の二組はそれぞれ反対方向に歩いているから、どっちに「これ、落ちましたよ」とやるかをすぐに決めないといけない。まさにポール・オースター的二者択一状況である。

そこで2)の女性を追いかけることにした。言っとくけど、女性だから追いかけることにしたわけではないからね。

男性二人組みは駅に向かっている可能性が大で、少なくとも駅の手前の三井住友銀行(住友三井?)までは直線コースをたどる。一方、女性の方はすぐさまスタバに入るかも知れないし、そのまま中目黒方面にまっすぐ歩くつもりかも知れない。それに、スタバの先を曲がって、ガーデンシティを目指している可能性だってある。だから、その女性が落としたんじゃないと分かった段階で、反対方向に引き返せば、(たぶん)二人組みに追いつくはずだ。こういう完璧なロジックのもとに判断を下したのである。(どうしてこの判断力が仕事に活かせないんだ?)

そんなわけで、女性に追いついて「これ、落としませんでした?」と聞いたら、「いいえ」と、すげない返事。とてもイヤそうな顔さえしている。な〜んだ、二人組みの方だったのか。と、駅方向にUターンしてしばらく歩くうちに、女性の「イヤそうな顔」の原因が分かった。

これ、ナンパあるいはキャッチセールスの類だと思われたのだ、きっと。たしかにスターバックスのすぐ手前を歩いていて、後ろから突然そんなことを尋ねてくるやつがいたら、きっと自分でも警戒態勢に入ると思う。

違うんだよ〜っ。

と心で叫んでいるうちに、三井住友銀行の前の横断歩道を渡る男性二人組みが見えた。これはどうあってもカードを差し出して、正当に感謝されるのが今日の私の使命のような気がしてきた。


(つづく)

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