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マイケル・ウィンターボトム監督「ひかりのまち」の予告編を観た時、どうしてこの社会派の監督が、こんなコテコテのラブ・ストーリーを撮るんだろう?と思った。しかも音楽はマイケル・ナイマン。どうしてこんな人がコテコテのラブ・ストーリーの音楽なんかやろうんだろう?
で、映画を見終わった時、「やっぱ社会派のマイケル・ウィンターボトム、かなり考えさせられるよなあ〜」と思った。
舞台はロンドンのイースト・エンド。フリードリッヒ・エンゲルスが資本主義の裏側を告発した昔から低所得層の人が住む、かなり殺伐としたところだ。「ひかりのまち」は、ここに住む三姉妹(+弟+その両親)の物語。それぞれがそれぞれの問題を抱えながら、懸命に日々を生きていく。そして、そこには希望が「『ぜんぜんない』わけではない」程度のエピソードが描かれて映画が終わっちゃうのだ。
しかし、予告編を観た時と本編を観た時の感想がどうしてこんなに違うワケ?と思って、予告編をよ〜く思い出してみると、驚いたことに「ひかりのまち」の予告編は思いっきりウソをついていたのだった。
予告編を観て想像した映画のストーリー:
主人公のナディアが、「出会い系」サイトみたいな電話サービスでバイク男と知り合う。で、彼が「名前はアリスってことにしよう。『不思議の国のアリス(Alice in Wonderland←映画の原題が「Wonderland」なのだ)』のアリス」夜の遊園地を歩くナディア。二人は観覧車に乗る。夜に浮かぶ観覧車のひかり。ヴィバルディ系で盛り上げるマイケル・ナイマン。
本当の映画のストーリー:
主人公のナディアが、「出会い系」サイトみたいな電話サービスで男性(バイク男じゃない)と知り合う。バーで会ったがイマイチなんで裏口から帰るナディア。バイク男はナディアの妹の旦那なのだ。妻が妊娠したことを知ったバイク男が電話をかける。「名前はアリスにしよう(以下略)」ナディアの姉の息子が一人で夜の遊園地に出かける。夜の観覧車の映像。姉の息子を捜して遊園地を歩くナディア。探し当てた姉の息子は暴漢に襲われて泣いていた。
ここだけ切り取ったんでは何が何だか分からないと思うけど、とにかく、予告編で見せた映像は、「コテコテのラブ・ストーリー」だと思わせるべく本来まるっきり関係のないシーンをつなげたものなのだ。ウソばっかである。
まあ、たしかに、映画のストーリーを正確に伝えるとなれば、「すっげえ気の滅入る話ですよ」と言わざるを得ないし、そう言ったら絶対に客が入らないという事情は分からないではないけど、だからといって、まるっきり違うストーリーをでっち上げるってのはルール違反だぞ。
とはいえ、この映画に出てる役者はみんな巧い。だからますます客が入らないことになるわけだけど...
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