言葉と本と映画な毎日
日記
言葉の話
本の話
映画の話
いろいろな話


アッと驚く仕掛けの「クライング・ゲーム」を撮ったニール・ジョーダン監督は「ことの終わり」にも仕掛けを施してるんだけど、今回の仕掛けは「クライング・ゲーム」ほどの効果を上げていない。

とはいえ、「ニール・ジョーダン組」のスティーブン・レイはいつものように舌を巻くほど巧いし(この人の役柄の広さは何だ!)、例によってレイフ・ファインズの「胃潰瘍と水虫と偏頭痛をこらえる人」のような表情もすばらしい。

が、この映画で一番感動したのは、イアン・ハートが演ずる探偵。

探偵事務所の下働きみたいな仕事をやっていて、尾行中に人から怪しまれないように自分の息子を同行させたりする、やたらとショボイ風体の探偵なんだけど、この人のけっこう辛い生活感とか、でもささやかな仕事への誇りとか、レイフ・ファインズ演ずる小説家に対して抱く尊敬。そこいらの微妙な感情なり雰囲気なりが、うまいことブレンドされてじわ〜っとにじみ出してくるのがすごい。

「ことの終わり」ってくらいだから、いろんな人がいろんな立場で、「ことの終わり」の真相を探っていくという趣向の映画なわけだけど、メインの映画の流れとは直接関係のない部分での探偵の役所(やくどころ)をニール・ジョーダンがちゃんと脚本に書き、それをイアン・ハートがしっかり演じているから、単に仕掛けだけの映画に終わらない深みが出てきていると思う。


December 30, 2000

言葉と本と映画な毎日
日記
言葉の話
本の話
映画の話
いろいろな話