韓国映画「シュリ」はとてもチーズバーガーな映画だ。「チーズバーガーな」映画というのは、観る前に想像した映画の内容と、実際に観る映画との間にほとんどギャップがない映画のことである。と、勝手に決め付ける。
ある種の映画は、3分から3分毎に小規模の盛り上がりがあって、だいたい15分から20分毎に何かが爆発して、上映開始後70分から80分あたりで主人公の男女の間に愛が芽生える(またはとっても危うくなる)一方、状況はますます切迫、というパターンでくるんじゃないかなあ、と思って映画を観るとまるっきりその通りにストーリーが展開してしまい、思わず経過時間を腕時計で確認してしまう。これが「チーズバーガーな」映画のパターン。
「お、チーズバーガーが食いたいぞ」と思った時は、たいていの場合、食べたいチーズバーガーの映像がはっきりくっきり脳裏に浮かんでいて、オーダーして出てきたチーズバーガーを見ると、まあだいたい想像した通りのもので、食べてみても、ほぼ想像通りの味がする。「あの店でチーズバーガー頼んでみたら、なんとコルドン・ブルーを間に挟んだやつが出てきて驚いた」なんてことは絶対にない。
だったらチーズバーガーな映画でなくても、「大盛り牛丼な」映画とか、「ドネル・ケバブな」映画、シンガポールなら「ビーフヌードルな」映画って言っても構わないではないかと反論もできるけど、そうそう細かく分けるのも面倒くさいし、第一、英仏合作の場合はどうするか(「フィッシュ・アンド・バゲットな」映画?)などなど悩みは尽きない。
そんなわけで、「シュリ」はチーズバーガーな映画である。
映画を観る前から、これはリュック・ベッソンの「あれ」だなと思ったら、案の定そうだったし、スタジアムを舞台に繰り広げられるサスペンスって、ひょっとするとショーン・コネリーとニコラス・ケイジの「あれ」ではなかろうかと思ったら、はたしてその通りである。銃撃戦の撮り方が思いっきりジョン・ウーしてるとは予想してなかったけど、ぜんぜん意外じゃない。
だから、「韓国映画はハリウッドを超えた」という謳い文句は、実のところ順番が逆さまで、「世界中がハリウッドになった(ことの証明・韓国バージョン)」と言うのが正しい。
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