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「オール・アバウト・マイ・マザー」を観た。

驚いたことに「癒し系」の映画になってる。もちろん、アルモドバルがある日突然キアロスタミになるわけはないから、シャープかつセンシュアルな色使いや、悪趣味寸前(そのもの?)のエキセントリシティは健在。

でも、亡くなった息子を取り戻すことが、失われた過去をスタートオーバーすることで、それが同時に演技することでもあって、さらには人を許すことにもつながっていくという、パイ皮みたいに複雑なプロットが、ベティ・デイビスの「イブの総て」とか、テネシー・ウィリアムスの「欲望という名の電車」などといった映画・芝居をうま〜く使って、(これもパイ皮みたいに)繊細にまとめられている。

だから、これまでのちょっと戦闘的なスタンスが和らいで、とてもしみじみとした情感が醸し出されることになる。

結論:この映画、渋谷シネセゾンでは9月1日までの上映だそうで、まだ観てない人はすぐさま観た方がいいです。もう観ちゃった人は、少なくともあと一回くらいは観ておいても損はないと思う。

「パイ皮、パイ皮って言うけど、メタファー使ってハイ、お終い、てな説明は『品質管理入門』だけにしてよ」という人がいるかもしれないので(いるわけないか)、そこんとこをもう少し念入りに考えてみると...

警告:ここから先は、映画の細かい話をするので観てない人は読まない方がいいと思う。


(つづく)

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