力をもいれずして天地をうごかし、目に見えぬ鬼神をもあはれとおもはせ、男女のなかをもやはらげ、たけきもののふの心をもなぐさむるは歌なり。

いいねえ。言葉に一切無駄がなくて、とても品がある。

そもそも、三十一文字の歌が生まれたのはスサノヲノミコトの時代。で、時代を経るにしたがって：

かくてぞ花をめで、鳥をうらやみ、霞をあはれび、露をかなしぶ心言葉おほく、さまざまになりにける。遠き所も、いでたつ足もとよりはじまりて、年月をわたり、高き山も、麓のちりひぢりよりなりて、雨雲のたなびくまでおひのぼれるごとくに、この歌もかくのごとくなるべし。

マイケル・オンダーチェが砂漠に吹く風を書いてる部分にとてもよく似てるぞ、ここんとこ。Wise men write alike.

ところが、である。世の中がハデになって、人の心がチャラチャラしてくると、軽薄で中身のない歌が多くなってきたのだ。こりゃいかんことよ、と貫之さんが言って、堕落した最近の状況として例に持ち出すのが、なんと六歌仙なのである。

六歌仙って、ギターでいうとジミ・ヘンドリックスとジェフ・ベックとエリック・クラプトンをさらに一人ずつクローニングしたようなドリームチームのはずなのに、これをボロクソにけなすんだな、貫之さんは。