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僧正遍昭：歌の形式こそもっともらしいけど、そこには真実がない。絵に描いた女性を見て、空しく感動してる、みたいなもの。
在原業平：心がはやりすぎて言葉が足りない。花はしぼんでるのに匂いだけ残ってる、みたいなもの。
文屋康秀：言葉尻の技巧に凝って、心にふさわしくない。服だけ立派な商売人、みたいなもの。
喜撰：言葉の力が弱くて、歌のメリハリがない。せっかく秋の月を見ようと思ったら、暁の雲に隠れてしまったではないか、みたいなもの。
小野小町：心にしみる歌だけど、調べが弱い。美人だけど病気がちでねえ、みたいなもの。
大伴黒主：歌のさまに品がない。薪を背負った山人が、花のかげで一休みしてる、みたいなもの。
小野小町が「よき女（をうな）のなやめるところあるに似たり」というのが否定的評価だってことは、エゴン・シーレやクリムトの絵を紀貫之が見ても「こんな病人のどこがいい！」とか言うんだろうな。
それにしてもすごいのが、大伴黒主。いきなり「そのさまいやし」だもんね。映画「タイタニック」を何回も観て、その度に泣いた人にだってそこまでは言わないぞ。
と書いて、ひょっとしてこれ読んでる人の中にタイタニックを何回も観て、その度に泣いた人がいるのではないか、そしてまたしても友だちが減るのではないか、という不安がよぎった。今度から「タイタニック」を形容する時には、「文屋康秀の和歌みたいな映画」だということにしよう。
まあ、そんなわけでね、いちごう君、「仮名序」はとってもいいよ。で、映画「アルマゲドン」は「薪おへる山人の花のかげにやすめる」みたいな映画だよ。
July 15, 2000
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