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村上龍がメールマガジンの読者と一緒になって、「バブルはなぜ起きたか?」を考えていく、という番組をNHKでやってた。

「バブル経済」は、欲に目がくらんだ銀行員が土地投機に走ったことが大きな原因だと考えられているけど、むしろ、銀行員は欲に目がくらんだどころではなく、むしろ欲張らず、「堅実に、まじめに」働いていたからこそ、バブルが起きたんじゃないか、というのが暫定的な結論。

もっと欲張って、儲かりそうな投資をじっくり選んでいれば、あれだけの資金を土地に投じることはなかった。でも、みんなまじめ一本槍だから、ひたすら「土地の神話」を信じて行動した。

てな調子のナレーションが入る。

でも、400年単位でモノを捉える「インド哲学」に触れた私としては、ぜんぜんこの説明にナットクできない。そもそも1980年代に「土地価格は上がり続ける」という「神話」ができちゃってるのはすごくヘンである。

私有財産として土地に値段が付くようになったこの100年の間には、関東大震災があって、世界恐慌もあって、第二次大戦も起きてるわけだから、その度に土地の値段は大きくでんぐり返っているはずだ。この間を正確に反映した「神話」が出来上がるとすれば、「土地の値段ほどアテにならないものはない」でないといけない。

だから「土地の神話」と呼ばれているものは、太古の昔に創造されたものがいまだにレンメンと続いている、ということではない。将来の土地の値段を考える場合は(何の根拠もなしに)第二次大戦を出発点とする、そして、それ以前はまったく考慮しない、というとても理不尽な「信仰」に近いものに見える。

「堅実」で、「まじめ」であるということは、実のところ、こうした無根拠な信念を一斉に抱くことのできる能力を指していると思う。でも、「せ〜のっ!」で一斉に何かが変わるという状況は偶然に生まれるものじゃない。かと言って、「おまえが悪いっ!」と指させる人がいるわけでもない。

英仏独の最近100年を見てると、こんな風に人の考え方が一斉に変わる状況がいっぱい生まれてきてる。ということを禿頭のフランスの学者が言ってる。で、そうした事態は第二次大戦後の日本にも当てはまるのである。

というような結論が、品質管理サークルの研究からアッという間に導き出せたら、担当教授の影におびえる日々も「神話」として人に語れるんだろうけど...(^_^;)


May 9, 2000

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