冷やしラーメンというのがある。
これが苦手だ。もっとも食べたことないから、正確に言うと、その存在をすんなりと受け入れるのが困難だ、ということになる。「冷やし」+「ラーメン」という組み合わせって、何となくあってはならないもののような気がするのだ。例えば、「気の滅入る」+「サンバ」とか、「アツアツの」+「スイカ」、あるいは「肌寒い」+「サウナ」みたいな感じ。
不思議なもので「ラーメンは温かくあるべし」と思ったことはないくせに、冷やしラーメンが続々と登場するようになると、「ラーメンは冷たかるべからず」→「ラーメンは温かくあるべし」とずっと思い続けてきたような気分になっている。自分では気が付いてなくても、食べ物を納めたメンタルマップの整理棚には、かなり画然とした仕切り板が入ってるらしい。
似たような話がある。
以前、仕事でつき合いのあった中国系マレー人のおじさんが「俺はどうも寿司が苦手だ」と言った。生魚がダメなのかなと思っていると、「寿司ってさ、ごはんを冷やしたもんだろ?それがどうもダメだ」というのが理由だった。「ごはん」=「温かくあるべし」な人にとって、たしかに寿司は「冷やしごはん」だ。そして、このおじさんにとって、「冷やした」+「ごはん」は、「さっぱりした」+「ドリアン」と同じくらい、あってはならないものだったんだろう。
そういえば、これも会社勤めをしていた頃に取っていた中国語のクラスの先生が、「中国でもおにぎり食べますか?」という質問に対して、「中国人は冷たいごはんは食べませんっ(きっぱり)」と答えた。「めっそうもない」とか、「何をたわけたことを申す」みたいな口調だった。
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