疑問文を使って表現すべきではない現実というものがある。
例えば、JR立川駅のエレベータがガクンと止まって、どうしたんだろうと下の方を見ると、おじさんが気絶して倒れていた、という場合。前のめりじゃなくて、そのまんま後ろっ側に倒れているので、打ち所が悪かったりするとけっこうタイヘンなのだ。
だから、私の前に立っていたおばさんが発した呑気な疑問文はまことに「不適切」なのである。
ところが、その友人と思しきおばさんがまたしても疑問文を発する。
「誰か人を呼んだ方がいいんじゃないの?」
疑問を呈するヒマがあったら、すっ飛んで人を呼ぶべきなのである。
しかし、最初の疑問文おばさん曰く、
「あの女の子がケータイで人を呼んでるんじゃないの?」
「あの女の子」というのは、エレベーターのすぐ下にあるファースト・キッチンのバイトの子だ。倒れたおじさんのすぐ後ろにケータイを持って立っている。
けど、その子が人を呼ぶためにケータイで話してるかどうかわからないではないか。別に疑うわけじゃないけど、その前から友達と話をしていたら、目の前で人が倒れたもんだから、実況中継しているのかもしれないではないか。だいたい10メートルくらい離れた場所に立ってる女の子をアテにすべきではないのだ。
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