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うんと昔、「これみよがし」というのはお菓子のことだと思っていた。
漢字で書くと「これみ夜菓子」(「これみ」はたぶん人の名前か土地の名前)。おそらく「これみよがしに〜する」という言葉を最初に聞いたのが、たまたま食べ物を見せびらかすシチュエーションだったからこんな連想が働いたんだと思う。
「これみ夜菓子」は平安時代(て言うか、江戸よりだいぶ前、くらいの意識しか持ってなかった)のお菓子なのだ。めったなことでは手に入らない。すごく高い。
だから、夜桜見物に繰り出した平安貴族の中で、「これみ夜菓子」を取り出してみんなに勧めたりできるのは、いちばん位の高い人。これがたいていの場合、とても性格が悪い。だから、しつこくしつこくみんなに「これみ夜菓子」を勧める。真っ白く塗った成田三樹夫が、気味の悪い笑顔で勧めるのだ。
ところが、「お、こりゃどうも(バクッ)」なんてことするとタイヘンなことになる。日の出を待たずして、京の街中に「事情に疎い田舎者」の噂が乱れ飛ぶ。もちろん真っ白く塗った成田三樹夫が、今度は笑顔抜きのアップでそいつを罵倒するカットが続く。
いや〜、一見みやびやかに見える平安貴族の夜桜見物の裏には、けっこうドロドロした駆け引きがうごめいているものなんですねえ。(すっかり「これみ夜菓子」が存在する前提)
なんてことを思い出したのは、先日、銀行でお金をおろした時に、前の人が「これみよがし」に置いていったと思われる残高控がATMの上に残っていたから。
引き出し額はぴったり100万円、預金残高が1千万円になってた。
裏にドロドロした駆け引きがあるのはヤだけど、やっぱ風流は欲しいよなあ。
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