香港自在番外編
香港トイレ事情
香港では、他人にタダでトイレを提供する、という考えはもともとないらしい。
公共の施設、いわゆる公衆トイレなどは、日本よりはるかに清潔なのだが、
普通のデパートや飲食店のトイレとなると、なぜか急激にレベルが落ちる。
また、案内表示がなかったり、入口に鍵がかかっているなど、明らかに
「部外者はお断り」という態度だ。
これはどうしてなのだろう、と考えると、おそらく2つの理由があると思われる。
1つは、香港の住宅事情の悪さ。限られた空間を有効活用するため、トイレ
は極力場所をとらない、厨房の隅などに作られる。大きさは、工事現場の簡易
トイレ並。たとえ10cmでもスペースがあれば商品を並べたいのだから、広い
トイレは全くのムダである。
それと、違法建築などにより、下水の配管がややこしくなっていたり、時には逆流
することもあったり、と、トイレ一つ作るのに結構な金と労力が必要だ、ということ
も原因に挙げられるかもしれない。
2つ目は、香港人の「公共物」と「私物」に対する考え方。公衆トイレは税金で
作られ、管理人を置いてこまめに清掃させるなど、行政によって運営されている。
一方、お店のトイレは、お店が自分たちの費用で建て、トイレットペーパーや水道
代も自分たちで負担している。
タダの物なんてほとんどない香港で、前者は「政府の金」、後者は「自分の金」に
よって他人に同じサービスを受けさせる、なんていうのは割があわない。むしろ、自分
たちも店にトイレを置かないで、公衆トイレを使うようにすれば、工事代水道代
その他もろもろの節約になる。
日本では、デパートや飲食店が、お客様にトイレを提供するのは当然のサービス、
と考えられているが、香港では、他人の排泄物を自分たちのお金で処理する、なんて
バカバカしいことは誰もやらないのだ。
広東道のSilverCourtというショッピングビルに行った時、お店の人に「トイレはどこか?」
と訊いたら、ここにはないので道の反対側のビルに行け、と言われた。本当はあるのかも
しれないけど、もしお店の人もいちいち道路はさんで用を足しにいくのだとしたら、不便で
しょうがないだろうなあ。